サラのおはなし
私はサラです。
森に住んでいます。
動物たちと木の実を食べたり、お散歩したり、ふざけたりしています。
ここから遠くの様子を、風が運んで教えてくれます。鳥は、人間の様子を詳しく教えてくれます。
夜には満天に広がる星々と、気の遠くなるような歴史の話をします。
眠くなったら、シンと静まり返った闇に、すっぽりと包まれながら、安心して休みます。
森から少し離れたところに、コミュニティがいくつかあって、私は、湖に映るコミュニティの様子を見たりするのも好きです。
湖は、私にいろんなことを教えてくれます。
過去にあったことも、未来におこることも。
遠く離れた場所で起こった事でさえ、まるで、その場に私もいるかのように、水面に映し出して伝えてくれます。
コミュニティでは、ときに争い事が起きます。大小はありますが、人間同士の摩擦が生み出すのは、喜びや楽しさばかりではないようです。
その為、苦しみや、悲しみを抱えた人間が、たまに私を訪ねに来ます。
人間が到着する前に、鳥が状況を説明してくれるお陰で、その人間の置かれた立場を思いやることができます。そんなとき、風は、人間の感情を運んでくれます。お陰で、とても心を痛めている人間に、どんな言葉をかけたらいいのか、事前に木々に相談できます。花々たちは、その人間のために、優しさのエッセンスを惜しみなくわけてくれます。
森のものたちは、みんな同情的で、人間が元気になるように、耳元でささやきかけています。地面は温かく迎え、光は穏やかに注ぎます。
するとまもなく、その人間は「寂しくないか?」「コミュニティへ来てはどうか?」と、私を心配してくれるまでに、すっかり回復します。本来の明るさを取り戻した様子が、とっても嬉しくて、私はつい、はしゃいでしまいます。そしていつも、コミュニティでしか手に入らないものを、私にくれます。
人間は、私の声以外の声は聞こえませんが、森の優しさを、どこかで気づくのでしょう。すっかり元気になって、またコミュニティへ戻っていくのでした。
サラのお話し②へつづく
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